モディ政権とBBCの諍い
インドの国税庁 所得税課 ( Income Tax Department) が、英国メディアBBCの
ニューデリー・その他の事務所に捜査に入ったと報道されています。
捜査中とのことで、詳しい情報はBBC・国税庁
どちら側からも公表されていませんが、
BBC がモディ政権に批判的なドキュメンタリーを流したわずか1週間後に
捜査に入ったということで、大きな波紋を呼んでいます。
BBCのドキュメンタリー「India: The Modi Question」は、
インドでの放送が禁止され、放送前の検閲プロセスも停止されています。
さらに、SNS等で番組のクリップを流すことも制限されています。
インド外務相はこのドキュメンタリーを
「客観性がなく、特定の意図を持った内容である」と批難しており、
BBCは「正当な調査に基づくもので、幅広い意見や考えを含むもの」と
正当性を主張しています。
BBCのドキュメンタリーは、モディ首相と国内のムスリム教徒との
緊張状態を取り上げたもので、
さらに、2022年 にモディ首相が当時グジャラート州知事時代に発生した
深刻な宗教暴動に対して、適切な対応を取らず、暴動を放置したのでは、
という内容を調査したものです。
2002年のグジャラート州の大都市、アーメダバードで発生した
宗教暴動ですが、アーメダバード郊外で60名が亡くなった鉄道の
火災事故が発端となり、イスラム教徒が放火したとの噂が流れ、
対立がエスカレートし、イスラム教徒を中心に
2000名の死者が出てしまいました。
モディ首相は、当時の州知事でしたが、
ヒンドゥー教徒のイスラム教徒に対する暴動を放置し、
州知事としての適切な権限を行使しなかった、とされ、
州知事を辞任しました。
その後、司法当局は証拠不十分として起訴には至りませんでしたが、
アメリカ国務省は、宗教の自由に対する重大な違反、として、
入国するに好まざる人物に指定し、ビザの発給停止、
9年間の入国禁止としました。
インド国内では、モディ人気がまだ高いこともあり、
インド国内の問題を外部から、特に旧宗主国が指摘することに強い反発があり、
植民地時代にさんざん好き放題しておいて、何を非難するのだ、との
声が強くあります。
ドキュメンタリーは、先の暴動に対する疑惑だけでなく、
イスラム教徒が過半数を占め、パキスタンに接し、
度々パキスタンとの小競り合いや、テロが発生している
カシミール州に対して、自治権を大幅に制限したことも取り上げています。
BBC自体はインド国内で広く流れていることもなく、
影響力が強いとは言えませんが、
2024年の選挙に向け、モディ政権もかなり神経質な
対応をしているように思われます。
また、こうした対応を見ていると、
旧宗主国に対する反発もかなり根強いものがあることも
見てとれるのではないでしょうか。
英国に強い影響を受け、英連邦との連携を重視しながらも、
反発心も強くある、インドの複雑さが感じられます。
選挙に向けて、モディ政権のムスリムに対する対応が、
今後変わっていくのか、さらに厳しい対応となるのか、
見守っていく必要があるでしょう。